カテゴリー:神社
福岡県久留米市、筑後川のほとりに鎮座する水天宮。全国に約100社ある水天宮の総本宮であり、安産・子授け・水難除けの神として広く知られています。今年、この神社と縁の深い筑後川花火大会が中止となったこともあり、あらためてこの神社の魅力を、地元で見てきた景色と共にご紹介したいと思います。
壇ノ浦の悲劇を今に伝える神社

水天宮の創建は1190年(建久元年)。壇ノ浦の戦いで平家が滅亡した際、幼くして亡くなった安徳天皇と、共に海に沈んだ平家一門を弔うために建てられたと伝えられています。御祭神には、天御中主神という国生みの神と並び、安徳天皇、建礼門院(高倉平中宮)、二位の尼という、いずれも平家滅亡の悲劇に連なる方々が祀られています。
この由緒から、水天宮は水難除けの神として篤く信仰されるようになりました。江戸時代には、9代久留米藩主・有馬頼徳公が江戸の屋敷にご分霊を勧請し、それが現在も多くの人に親しまれる東京・日本橋の水天宮につながっています。つまり久留米の水天宮は、全国100社近くある水天宮の、まさに大本にあたる神社なのです。安産・子授けの信仰も厚く、戌の日には安産祈願に訪れる方の姿を今も多く見かけます。
境内には、幕末の勤王の志士として知られる真木和泉守の銅像や、彼が身を隠していたという庵の再現もあり、歴史好きにはたまらないスポットになっています。また、安徳天皇と玉江姫の恋物語にちなんで植えられたという椿が境内に20種近く植えられており、季節によって違った表情を見せてくれます。
私自身との、久留米での日々
久留米という街には、小学生の頃から親しんできました。地元を代表するこの神社は、成長の過程で自然と身近な存在になっていて、地域の子どもたちの活動拠点としても機能してきた場所です。そうした積み重ねがあるからこそ、この神社の魅力を、少し実感を込めてお伝えできるのではないかと思っています。
一番のおすすめは、筑後川沿いに沈む夕日

数ある見どころの中で、私が一番好きなのは、境内から眺める筑後川沿いの景色です。久留米は筑後平野の中に位置する街で、視界を遮る高い山がない分、空が驚くほど大きく広がって見えます。特に夕暮れ時、筑後川の川面がオレンジ色に染まっていく様子は、何度見ても飽きることがありません。神社にお参りしたついでに、少し足を止めて川沿いのベンチで夕日を眺める――そんな時間の使い方を、ぜひ多くの人に味わってほしいと思います。
水難除けの証、ひょうたんのお守り
水天宮を代表するお守りといえば、ひょうたんの形をした首飾りのお守りです。水難除けの象徴として親しまれており、川や海に出かける機会が多い方への贈り物としても選ばれています。御朱印もいただくことができ、参拝の記念として持ち帰る方も多く見かけます。
筑後川花火大会――370年続く夏の風物詩、そして今年のこと

水天宮を語る上で欠かせないのが、筑後川花火大会との深い関わりです。この花火大会の起源は、なんと1650年(慶安3年)、水天宮の社殿が完成したことを祝って打ち上げられた奉納花火にさかのぼります。今年でなんと367回目を数える、全国でも屈指の歴史を誇る花火大会です。
近年の開催規模を振り返ると、2019年には約1万8,000発の花火が打ち上げられ、例年およそ45万人が来場する、西日本有数の規模を誇っていました。しかし2020年・2021年は新型コロナウイルスの影響で中止となり、2022年には打ち上げ数を約8,000発、打ち上げ時間も30分に短縮しての開催となりました。直近の2025年には約1万5,000発まで規模を戻していたものの、今年2026年に予定されていた第367回大会は、当初から前年を下回る約1万2,000発の予定となっていました。
そして今年は、7月28日に発生した熊本地震の影響で、8月5日開催予定だった大会そのものが中止となりました。警備にあたる警察官や消防隊員が被災地対応にあたっており、来場者の安全確保が難しいというのが理由です。実行委員会が中止を発表したのは、コロナ禍の2020年・2021年以来のことです。
打ち上げ数の推移を見ても分かる通り、この花火大会はここ数年、様々な事情で規模の変動や中止を経験してきました。今年もまた、やむを得ない事情で中止となったわけですが、370年以上にわたって水天宮と共に受け継がれてきたこの夏の風物詩が、来年以降も変わらず続いていくことを、地元の一人として願わずにはいられません。
まとめ
水天宮は、壇ノ浦の悲劇を今に伝える由緒ある神社であり、水難除けの信仰の総本山であり、そして370年続く花火大会の起源でもある――久留米という街に、幾重にも深く根を張った存在です。筑後川沿いの夕景と共に、ぜひ一度、この神社の空気を味わいに訪れてみてください。
アクセス
水天宮は、JR久留米駅(水天宮口)から徒歩約10分と、電車を使う場合はJR久留米駅からのアクセスが便利です。一方、西鉄久留米駅からは距離があり、徒歩では30分以上かかるため、タクシーやバスの利用がおすすめです(公式サイトでもタクシーで約10分と案内されています)。筑後川沿いの散策と組み合わせて訪れるのもおすすめで、参拝の前後に川沿いを少し歩くだけでも、久留米という街の空気を感じてもらえるはずです。
※花火大会の中止に関する情報は、2026年7月31日時点の発表に基づいています。最新の開催情報は、筑後川花火大会実行委員会や久留米市の公式発表でご確認ください。
