2016年、福岡から熊本へ転勤した年でした。
慣れない土地での新生活。近所には湯らっくすがあり、大変お世話になった施設です。
幼い頃から温泉が身近にあった環境で育った私にとって温泉はなくてはならないもの。サウナも好きなこともあり、湯らっくすをはじめとする熊本の施設は、不慣れな土地で自分に戻れる特別な場所でした。
湯らっくすがリニューアルを迎える2017年、私は転勤で熊本を離れることとなりました。
もちろん、それで湯らっくすとのご縁が切れたわけではありません。九州に帰る機会があるたびに、数えるほどではありますが、時々足を運んできました。頻繁にというわけではないけれど、いつも変わらずそこにあってくれる、そんな存在でした。
あれから約10年。
熊本で生まれ育った湯らっくすが、福岡に、しかも私が今暮らす街にやってくる。そのニュースを知ったとき、あの頃の記憶が鮮やかに蘇りました。
それから10年、福岡へ

前回の記事(2026年7月1日公開)で、私は湯らっくす福岡のクラウドファンディングに支援したこと、そしてプレオープンの招待を心待ちにしていることをお伝えしました。
あれから約2か月。クラウドファンディングは無事に募集を終え、施設の詳細も少しずつ明らかになってきました。
正式名称は「湯らっくす福岡今泉AMBIENT」。プレオープンは2026年8月20日から24日まで、そしてグランドオープンは8月28日と決まりました。
長かった待ち時間の先に、ようやく扉が開こうとしていました。
予期せぬ再来 ― 2026年7月28日
けれど、その道のりは平坦ではありませんでした。
2026年7月28日、熊本で最大震度7を観測する地震が発生しました。県内3回目となる震度7。2016年の震災から10年3か月ぶりの出来事でした。
湯らっくす熊本本店も、温泉設備の故障により一時休館を余儀なくされます。再開のめどは、当初「未定」とされていました。
それでも本店は、8月1日に営業を再開。8月3日には通常営業に復帰しました。地震から一週間足らずでの立ち上がりでした。
10年前、震災の中で生まれ育ったこの場所が、10年後にまた同じような揺れに見舞われ、それでもまた立ち上がる。そして、そのすぐ後に福岡への新たな挑戦を迎える。
偶然にしては、あまりに重なりすぎている気がしました。
「諸行無常」を掲げたサウナが、現実と重なった日

福岡今泉店のクラウドファンディングには、ある一貫したコンセプトがありました。西生社長が敬愛する「七人の侍」をモチーフにした、「諸行無常を感じるサウナ」という世界観です。
守るための戦い。不器用で未完成な人間たちが、それでも踏ん張る物語。
企画の時点では、映画好きなオーナーによる一つの演出だったのかもしれません。けれど地震を経た今、この言葉たちは、期せずして今の熊本と福岡の姿に重なって見えました。
プレオープンを目前に控えた頃、西生社長はX(旧Twitter)で支援者に向けてこう綴っていました。
福岡今泉店は、熊本本店を小さくした施設でも、熊本本店に代わる店でもない。継承したのは「入る前より少し元気になって帰る」という想い。40名収容のサウナと10トンの水風呂は、熊本本店へのオマージュであり、そのDNAを受け継ぐ象徴。
そして、「比べるのではなく、もう一つの湯らっくすとして体験してほしい」と。
この言葉を受け取って、私は記事の書き方を少し変えることにしました。熊本と福岡を比べる記事ではなく、「もう一つの湯らっくす」との再会を、自分の言葉で綴ろうと。
プレオープン取材レポート
そうして迎えた2026年8月21日。私は、湯らっくす福岡今泉AMBIENTへ足を運びました。
限られた空間を活かしきった、サウナ中心の設計

館内に入って最初に感じたのは、決して広くはない空間を、驚くほどうまく使い切っているということでした。
シャワールームも限られたスペースながら、男性側で5名ほどが同時に使える動線が確保されていて、狭さを感じさせない工夫がされていました。
館内はフロアごとに役割が分かれています。1階は受付とAMBIENT食堂、中庭。2階にサウナと水風呂、更衣室。3階には小声茶屋というエリアと、もう一つのサウナ、そして外気浴スペースがありました。
体感温度が語る、2つのサウナの個性

メインとなる2階のサウナは40名収容、温度は72度。個人的には、もう少し高くても良いかなという印象を受けました。
一方、3階のサウナは60度。フロアによって全く違う体感になるよう設計されているようで、この温度差そのものが、今泉店ならではの過ごし方を生んでいるように感じました。
サウナストーブはフィンランドのHARVIA製。本格的な設えでした。
潜水艦サウナと、伝声管

西生社長が挙げていた目玉のひとつ、潜水艦サウナ。実際に足を踏み入れると、丸い舷窓のような窓、青い照明、鎖と配管を吊るした演出が、本当に潜水艦の中にいるような感覚にさせてくれました。
すぐそばには伝声管も。青い光の中に赤いボックスと丸窓が浮かび上がる意匠は、思わず写真に収めたくなる存在感がありました。
立ったまま肩まで浸かる、10トン水風呂

そして、この施設のもう一つの主役である水風呂。身長170センチ弱の私が、立ったまま肩のあたりまで浸かる深さがありました。
水風呂の縁には、達筆な墨文字で「見る前に跳べ」と書かれていました。「諸行無常」を掲げたこの施設らしい、迷わず飛び込むことを後押ししてくれる一言です。
熱狂のアウフグース

この日は、複数回にわたってアウフグースが行われていました。私は12時30分の回と13時30分の回に参加しました。
12時30分の回は、熊本本店から来られたふみさんと、福岡スタッフのしょうごさんが担当。13時30分の回は、熊本本店のまなみんさんと、福岡スタッフのひかりさんのペアでした。
香りの使い方も、風の送り方も見事なもので、会場全体がひとつの熱量に包まれていくのを感じました。この日一日で、アウフグースは合計10回も行われていたようです。
本日のアロマはラベンダー。香りに包まれながら過ごす時間は、格別なリラックス効果がありました。
劇場エリアでの食事と、屋上での一杯
1階の食堂は、プレオープン時点でテーブルが13個ほど、椅子は20脚ほど設置されていました。今回いただいたお食事は、牛肉や鯵フライ、あさりのお味噌汁など、想像以上に豪華な内容でした。
そして屋上スペースでもドリンクを楽しむことができます。キンキンに冷えたビールは、火照った体に染み渡るおいしさでした。

熊本と福岡、10年越しに繋がったもの
3時間の滞在を終えて外に出たとき、入る前とは比べ物にならないくらい、体の中から元気になっているのを感じました。
それは施設の完成度の高さだけによるものではありません。熊本本店から来られていた、まなみんさんやふみさんの、この場所への向き合い方から伝わってくるロイヤリティの高さに元気をもらったからだと思います。
ハード面は、もう申し分ないほどに素晴らしい仕上がりでした。だからこそ、これから願うのはただ一つ。熊本本店が大切に育ててきた「ソフト」――お客さまへの向き合い方や、この場所にかける想い――が、福岡のスタッフの皆さんにもしっかりと受け継がれていくことです。
2016年、私は熊本で湯らっくすに救われ、けれどすぐにその場所を離れることになりました。
2026年、私は福岡で、もう一つの湯らっくすと再会しました。
10年という歳月と、二度の大きな地震を経てもなお、「入る前より少し元気になって帰る」という想いは、変わらずそこにありました。
九州のサウナ文化が、また一つ、新しい場所で息を吹き返そうとしています。グランドオープンは8月28日。この物語の続きを、これからも見届けていきたいと思います。
次の休日も、あなたにとって自分らしい豊かな時間になりますように。
施設情報

湯らっくす福岡今泉AMBIENT
住所:福岡市中央区今泉2-4-58(インペックス通り沿い)
アクセス:地下鉄七隈線「天神南」駅から徒歩9分/「薬院大通」駅から徒歩7分
営業時間:10:00〜25:00(最終受付23:00)
グランドオープン:2026年8月28日(金)
