福岡発のステーキ専門店「うえすたん」。美味しいビフテキを食べられる、福岡を代表するお店だと言っても過言ではありません。
県内に十数店舗を構えるこのステーキチェーンは、1985年の創業以来、福岡の食文化に根を下ろしてきました。今回訪れたのは、南区大橋にある「ビフテキ屋うえすたん 大橋店」です。
福岡市内に暮らす私にとって、大橋はそう遠くない生活圏です。西鉄大橋駅の東口から歩いて4分ほど。江川ビルの1階に、その店はありました。
カウンターだけの、小さな鉄板劇場

店内に入ってまず気づくのは、その規模の小ささです。コの字型のカウンターが並ぶだけで、席数は10席強ほど。テーブル席はなく、客はみなカウンターを囲むようにして鉄板と向き合う格好になります。
この造りが、うえすたんという店の本質を物語っています。うえすたんは、レストランである以前に「調理の現場」を客に見せる店なのです。
レアで届く、という約束事

うえすたんの名物は、なんといってもその提供スタイルにあります。
注文した肉は、まず表面だけを軽く炙った状態、つまりレアで鉄板に乗ってやって来ます。鉄板の上には、もやしがぎっしりと敷き詰められています。肉はその上に乗って登場し、もやしとは別に、何も敷かれていない空いた一角が用意されています。客は、その空きスペースを使って自分の手で好みの焼き加減に仕上げていくのです。
焼き上がった肉から出る肉汁は、そのままもやしに落ちていきます。焼き終える頃には、もやし自体が肉の旨味を吸った副菜へと変わっている。焼き加減を仕上げる工程が、同時にもう一品を仕上げる工程にもなっているわけです。
レアのまま食べても良いし、余熱でじっくり火を通しても良い。焼き加減の最終判断を、店ではなく客に委ねる。これは単なる調理法の違いというより、うえすたんが長年守ってきた「お客様との約束事」だと感じました。
厨房の中で完成された一皿を受け取るのではなく、自分の鉄板の上で仕上げの数十秒に立ち会う。この時間があることで、料理と客の距離がぐっと近くなります。
注文したのは、サイコロステーキとニューヨークカイノミ

この日注文したのは、サイコロステーキ150gと、ニューヨークカイノミ250gの2品です。
サイコロステーキは、小ぶりにカットされている分、鉄板の熱が素早く伝わります。空いたスペースで転がすように動かすと、みるみるうちに焼き色が変わっていく様子が見えました。一口サイズだからこそ、焼き加減を細かく調整できるのが面白いところです。
肉質は柔らかい赤身で、噛むほどに牛肉本来の旨味が広がります。150gという量でしっかりと満足感が得られ、価格とのバランスを考えても、お得な一品だと感じました。
一方のニューヨークカイノミは、ボリュームのある一枚肉。こちらは面ごとにじっくりと焼き目を入れていく必要があり、サイコロステーキとはまた違った「焼く楽しみ」がありました。同じ鉄板の上でも、部位によって攻め方が変わってくる。この対比を一度に味わえたのは、2品を頼んだからこその発見でした。
サイコロステーキが一口ごとの手軽さなら、ニューヨークカイノミはステーキとしてのサイズ感と存在感で満足させてくれる一皿です。鉄板に乗った瞬間の見た目からして、明らかに主役級の風格がありました。
手造りのハム・ソーセージという、もうひとつの顔
うえすたんは、ステーキ専門店であると同時に、自家製ハム工房でもあります。豚・塩・水・燻製材にこだわった手造りのハムやベーコン、ソーセージは、店舗の看板メニューとは別の軸として長く受け継がれてきました。
ビフテキの脇に添えられる一品としてはもちろん、その製法自体が長年のファンを持つ、うえすたんならではのこだわりだと言えるでしょう。
大橋という街に根づいた一軒

大橋店は、県内展開する「うえすたん」の中でも決して大きな店舗ではありません。しかし、駅から徒歩数分という立地に、小さいながらも鉄板を囲む席を確保し続けている姿には、地域に根を張る店としての強さを感じます。
同じ福岡市内であれば、大橋までは生活の延長線上にある距離です。近所のステーキ屋という距離感でありながら、県内15店舗というスケールを持つチェーンでもある。この二面性こそが、うえすたんという店の面白さなのかもしれません。
ビフテキ屋うえすたん 大橋店 所在地:福岡市南区大橋2-11-12 江川ビル1F アクセス:西鉄大橋駅 東口より徒歩約4分 ※営業時間・定休日は来店前に公式サイトまたは店舗へご確認ください。
